今は地球上に多種多様の生命が溢れていますが、皆さんは生命はどうやって生まれたのだろうか?という疑問を抱いたことはないでしょうか。
ダーウィンによると、遺伝子の突然変異と自然淘汰によって生命は進化してきたとのことですが、では一番最初の生命はどうやって作られるのでしょうか。
この疑問について、現在有力な説の一つに、化学進化説というものがあります。
これは、太古の海が有機物のスープとなり、そこに雷や火山などの刺激で生命が生まれたという考え方です。
1953年に行われたユーリー-ミラーの実験では、水・メタン・アンモニア・水素が入ったフラスコに放電することで生命の元となるアミノ酸が作られることが示されました。
しかし、ここには大きなギャップがあります。
現在、地球上の生命のほとんどは、タンパク質で出来ています。
そしてこのタンパク質は、ただのタンパク質ではなく、自己複製を行うことのできる、機能を持ったタンパク質です。
機能を持ったタンパク質を構成する酵素やアミノ酸は、それ自体が機能を持ったタンパク質から作られます。
そのため、鶏が先か、卵が先かの問題のように、最初にどうやって機能を持ったタンパク質が作られたのかという点において疑問が残ります。
さらにこの問題をややこしくしているのは、現在のタンパク質と、最初に作られた40億年前のタンパク質の構造や機能が違う可能性があることです。
実は、ユーリー-ミラーの実験やその後行われた類似の実験では、アルギニンやリシンなどの基本的なアミノ酸が作られていないことが謎のまま残っていました。
これらのアミノ酸は正の電荷を持つため、逆に負の電荷を持つRNAやDNAとの反応性を強くする効果があります。
そのため、機能を持ったタンパク質を作るためにアルギニンやリシンは重要な役割を果たしています。
したがって、アルギニンとリシンが含まれたタンパク質がどのように作られたかという謎を解明することが重要でした。
この謎に関係して、次のような論文が出版されました。
この論文では、いきなりアルギニンやリシンが含まれたタンパク質が作られたわけではなく、オルニチンと呼ばれるアミノ酸が含まれたタンパク質が古代のアミノ酸との間のステップとして存在していた可能性があることが示されました。
オルニチンは、現在ではアルギニンの生成の中間段階として知られていますが、それ自体はタンパク質を生成するのには使われていません。
彼らの研究では、単純な機能(相分離)を持ったタンパク質が、より複雑な機能(DNA結合など)の基礎となった可能性があることを明らかにしました。
また、その単純な機能を持ったタンパク質は、現代のタンパク質には存在しないアミノ酸であるオルニチンを含む短い配列から生じる可能性があることが示されました。
近い将来、私たちの身体を作っているタンパク質がどのようにして作られたのか、その過程が全て明らかになる日が来るかもしれません。